海鷹丸 第50次航海 東京海洋大学  海洋科学部

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「ペンギンさんそこのけそこのけ海鷹丸が通る6」  1月11日
「今年もお邪魔しています」

 昨日から、ザトウクジラやアデリーペンギンが船の周囲に現れます。毎年この時期になると現れる白い船を見物することが彼らの恒例になっています。南緯65度17分、東経110度で観測をしています。遠くに氷縁が見えます。氷縁は海氷(海が凍ってできた氷)が密集して分布する最も北側のラインです。ここでの観測が終了したあと、さらに2マイル南にシフトし氷縁付近で海氷を採取しますが、この観測点がKARE20での最南点となります。氷縁の位置は衛星から送られる情報によってかなり正確に知ることができますが、分布状況は風によって刻々と変化するのでどこまで南に行けるかは現場まで行かないと分かりません。そして実際に、観測中も氷縁が移動しています。

 南極海の生態系研究者はこの氷縁を重視します。氷縁付近では春から夏の海氷融解期に植物プランクトンの大増殖(氷縁ブルームといいます)が起こることがあります。その仕組みについては、まだはっきりとは分かっていませんが、いくつかの条件が必要なようです。まず、海氷が融けるなどして海中に光が届くようになる;植物プランクトンの増殖に必須の元素である「鉄」の供給があること(どこから来るのか諸説あり);増殖した植物がある程度表層付近に滞留することなどです。このブルームが起こると、これを起点とした食物網・生物活動が活発化します。もう少し噛み砕いていうと、いろんな生物が食物網を介して氷縁ブルームの恩恵を受けるということです。増殖した植物を食べる動物プランクトンが成長・増殖し、それを食べる魚類や鯨類、海鳥も集まります。

 もちろん我々も氷縁に注目しており、明朝氷縁で海氷を採取します。海氷中には様々な微小な植物や動物、原生動物などが高密度で含まれています。彼らは氷の中を生活基盤として暮らしているのです。とんでもない生活環境のようにも思われますが、よいこともあります。植物にとっては、氷の中に入れば常に海面の光の豊富な場所に居続けることができ、光合成し放題です。動物にとって、氷の中は捕食者から身
を隠すのに格好かもしれません。さらに、同じ空間で餌の植物が増え続けるわけです。寝ていてもご飯が次々提供されるようなものです。しかし、そんな極楽生活は長くは続きません。春から夏にかけて氷が融解すると彼らは海の中に放り出されてしまいます。彼らの運命やいかに!です。

 南極海は、冬季にはひじょうに大きな面積が海氷に覆われますが、夏にはその大部分が融けて無くなります。季節的に氷に覆われる海域を季節海氷域といいますが、この面積は膨大です。したがって、海に放出される海氷中の微小生物群集の量も膨大になっているはずです。放出された微小生物はすぐ表層で誰かに食べられるかもしれません。あるいは粒子として沈んで、表層で合成された有機物を深海生物にもたらす役割を持っているとも考えられます。海氷微生物群集は、南極海の季節海氷域の生態系を考える上で避けて通れない重要な要素となっています。気候変動で海氷が減ったり増えたりすれば、季節海氷域の生態系が大きく影響を受けることが想定されます。
(写真:ザトウクジラ。船の周りでじゃれあうのを見せつけています。)
2017年1月11日(水)

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