東京海洋大学 ミュージアム機構
マリンサイエンスミュージアム
Museum of Marine Science, Tokyo University of Marine Science and Technology
展示案内

 展示解説:南極海調査とガラパゴス群島の生物

◾️南極海調査ー生物 Antarctic Ocean Surveys - Biota

東京海洋大学の前身、東京水産大学は実習船『海鷹丸』による南極海の調査を1956より、くり返し行ってきています。
日本の南極調査は、国際学術連合会議の呼びかけによる『世界観測年』(1956-57)に参加することから始まりましたが、この第1次南極調査の際に、海鷹丸II世は南極観測船『宗谷』の随伴船として調査に参加し、現在の昭和基地のあるインド洋区において海洋および漁業調査を行いました。この際にビームトロール調査によって採集された生物からは多くの新種が発表され、船の名前を冠する「ウミタカスズキ」Notothenia rossii marmorata (魚類)、 Pareledone umitakae (= Adelieledone adeliana) (タコ類)などに名前を残しています。
 第2次調査(1961-62)では、大学が主体として水中照度や音波散乱層(DSL)などの調査を含む海洋調査、氷山・流氷調査、オキアミを含むプランクトン・魚類の分布調査および漁業調査を行っています。
 これ以降、資源的にも重要なオキアミ Euphausia superba に関すßる生物調査をはじめ、魚類や底生生物の採集・分類学的研究、プランクトン群集やマイクロネクトン(小型の魚類やイカ類、エビ類などの漂泳生物)に関する研究などが現在までに研究されています。
 南極海の生物相は周南極海流、南極収束線などの海洋物理条件による隔離や氷による沈降のため大陸の沿岸・浅海域がきわめて狭く、隣接する大陸から隔てられていることなどから固有性の高い海域とされています。隣接するマゼラン生物地理区と比べても、たとえば貝類相では共通種は30種にも満たず、10%程度の共通性しかありません。
 低水温環境に適応した種が多く、血中に糖類を多く持って、凍結を回避しているコオリウオ類などが有名です。

南極海の生物の展示では、第1次、2次調査の際に採集されたオキアミ Euphausia superba をはじめとして、魚類やタコ類など底生生物の標本が展示されています。

参考文献:
Linse, K., 2002. The shelled Magellanic Mollusca: with special reference to biogeographic relations in the Southern Ocean., A.R.A. Gantner Verlag.

 

 

◾️ガラパゴス群島の生物  Biota in Galapagos Islands

ガラパゴス諸島は東太平洋の赤道直下、南アメリカ大陸、エクアドルからおよそ1000km西の外洋の真ん中に孤立する火山性の海洋島嶼(とうしょ)です。大陸から大きく隔てられているため、陸上の動植物にはガラパゴスゾウガメ、リクイグアなどのは虫類やナガラパゴスコバネウなどの鳥類等、多くの固有種を有していることはよく知られています。さらにその少ない生物群内での適応放散(たとえばフィンチのくちばしの多様化と餌選択性への適応)が知られており、また、島間でも地理的隔離が大きく、生物史上、ダーウィン(Carles Darwin)が、諸島に分布するフィンチやゾウガメなどに基づいて種分化や生物の進化を考察し、「進化論」の基礎を築くきっかけとなった地域として有名です。
 ガラパゴス諸島は、海洋環境としては赤道潜流(クロムウェル海流)起源の亜熱帯水、南赤道海流起源の温帯水、エルニーニョ時に卓越するパナマ湾起源の暖水という三つの水塊がぶつかるCentral American isthmus とよばれる複雑な海流条件下にあり、海洋生物学的にも東太平洋の生物地理学的大障壁(だいしょうへき)の東側に位置する特異的な海域です。東太平洋の大障壁とは生物の分布と幼生分散を考える上での概念で、西からの海流にのって流される、インド太平洋起源の、特に浅海性の生物の幼生が、海洋の島嶼づたいにスキップしながら分布を広げていく過程で、幼生の変態、着底までの期間・距離内に次の島嶼がなく、有効に幼生分散/分布拡大をおこなえない地理的条件に対して与えられた名称で、その東側にあるということはその海洋生物相がインド太平洋域と大きく異なっているということを意味しています。一方、島嶼の東側、パナマ・中南米からの分散/分布については 魚類や無脊椎動物など沿岸性海洋生物の約50%がパナマ生物地理区と共通するとされています。固有種も多く、貝類などでは800種ほど知られる沿岸性種の約18%ほどがこの海域の固有種とされ、複雑な沿岸域生物相を構成しています。
 東京海洋大学の前身、東京水産大学は、ダーウィンの『種の起原』出版100周年、大学創設70周年を記念して、1959年およびその翌年の2回にわたり、実習船『海鷹丸』によるガラパゴス群島の生物調査を行っています。資料館にはこの際に採集された貝類、魚類、ウミイグアナ、ガラパゴスアシカなどの標本が展示されています。

[ 土屋光太郎 ]

 

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口絵:海鷹丸よりみた南極海の氷山 (土屋光太郎 撮影)

                         

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